2025年5月19日「債権者自己競落の1R」
東京地裁開札トピックス(25.5.19日号)
債権者自己競落の1R
平成バブル崩壊後競売市場で多く見られた競落に「自己競落」というのがあった。特に都市銀行などが債権者であった抵当権をサービサー(債権回収会社)が債権譲渡を受け、そのサービサーの申立てによって競売が付されるものが多くを占めた。しかし、その後の不良債権の縮小によって、この自己競落はあまり見受けられなくなった。
4月23日開札で東京メトロ千代田線「綾瀬」駅徒歩約7分に立地する1Rが債権者自己競落された。このマンションは2016年の新築時に個人投資家に販売されている。この時の抵当権設定額は2000万円で外資(韓国)系銀行が債権者であった。それが2023年にサービサーに債権譲渡し、今回の競売に至っている。
さてこの物件は専有面積6坪強で、サブリースが設定されていて月額69000円強にて賃貸されている。管理費・修繕積立金は月額7200円強、固定資産税等は年約56000円であるので、実質収入は年約68万円である。これに対し売却基準価額は1215万円であり、実質年5.5%の利回り水準である。これに対し入札は5本あり、最高価1803万円にて債権者の自己競落であった。これは年利回りでは実質約3.7%の水準である。
ところで、このマンション同棟内の過去の競落データによれば、約7年前競落価格は1390万円弱であり、年実質5%程度の水準であった。今回自己競落とは言え、2番手の入札価格が1770万円であったことから、競落価格は2割超は上昇していると言える。本件債務者も当初の債務額(2000万円)から推して競売によらず任意売却による清算も不可能では無かったように思える競落結果であった。