2025年5月12日「マンション完成前死去の地権者住戸」
東京地裁開札トピックス(25.5.12日号)
マンション完成前死去の地権者住戸
都心部の新築マンションはその多くが既存の市街地の複数地権者を纏め等価交換手法をもって建設されるケースが多い。こういったマンションは計画から完成までの間で地権者に相続が起きることも珍しくないだろう。地権者が存命中に等価交換契約を締結した後に亡くなってしまえば、完成時には、その相続人が当該住戸を取得することになる。4月23日開札でこの日一番人気のタワーマンションの1室がまさにそのケースであった。
その物件は都営大江戸線「月島」駅徒歩約2分に立地する「MID TOWER GRAND」32階建の5階部分、専有面積約24坪の部屋であった。竣工は2020年10月であるが、この時点で地権者相続人計7人の共有保存登記されている。相続人の中には海外居住者もいたこともあってか、相続財産の処分等の協議が纏まらなかったようだ。そうこうしている間に共有者の複数が逝去し、2次相続も起こった。複雑な権利関係のまま、この部屋は未入居の空室のまま4年間経過したのち、共有者の一人が共有物分割請求により本競売を実施している。従って築後4年半を経過したものの新築未入居状態であり、再販業者としては商品化しやすい部屋と言える。そんなわけで売却基準価額1億1407万円に対し入札が29本集まり、最高価2億2100万円強にて競落されていった。実に売却基準価額の193%で、専有面積坪単価は920万円超である。このマンション、竣工時点で処分していればこの競落価格を少なくとも3割以上下回った価格であっただろう。相続人間の協議が長引いたことで結果として各相続人の受益が大幅に増加した。